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SS~ご立派な使い魔と黒の書生 [SS1]

以前どっかのWIKIで『ご立派な使い魔』というSSをチラ見したことがあります。内容はまあ、下ネタっぽかったので、ほとんど読みませんでしたが、発想自体は強く印象に残っていました。

はて、そんなわけで、その後ライドウ対アバドン王をプレイしていて、色々ネタが思い浮かび、勢いで書いてしまいました。

物書きを目指しているわけでもないですし、それほど文章を書くことも無いので、クオリティは小学生並みですが、まあここには載っけておきましょう。

※ご立派様は登場しますが、ネタの危険レベル的にはデビサマ本編と同じレベルと考えていただいて結構です。
 黒の書生が登場する都合上、台詞が入っています。ゲームでは台詞がない人物なので、注意。
 兎に角クオリティが低い、特に説明口調だったり描写が稚拙だったり酷いので、注意。




ご立派な使い魔と黒の書生

「さ、次はミス・ヴァリエールの番ですぞ」
 今日は、トリステイン魔法学院、春の使い魔召喚の儀式の日である。広場には魔法学院の生徒達が集まっている。トリステイン魔法学院では、二年生に進級すると、生徒達は自らの魔法の系統に相応しい使い魔を召喚し、一生のパートナーとするのだが…、この、ミス・ヴァリエールと呼ばれた少女は、険しい顔で生徒達の輪の中央に歩み出た。
「先生、ゼロのルイズには使い魔を召喚するなんて無理です」
 一人の生徒がそう口にすると、周りの生徒達は一斉に笑い出した。
「これこれ皆さん、学友を馬鹿にするなど、貴族にあるまじき行為ですぞ。さあ、ミス・ヴァリエール、やってご覧なさい」
 召喚の儀式を担当していた中年の教師、コルベールは、野次を飛ばす生徒達を注意し、ゼロのルイズと呼ばれた少女にそう言った。
 少女の名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。桃色に輝く長いブロンドの髪の、人形のような整った顔立ちの、小柄な少女である。ゼロのルイズ―魔法の才能ゼロのルイズ―そんな蔑称で呼ばれたルイズは、悔しさを押し殺し、皆に向かって言った。
「私、魔法はダメでも、サモン・サーヴァントには自信があるの。見てなさい、あっと驚くような使い魔を召喚してみせるわ!!」
 ルイズはそう言ってから、自分でハードル上げてどうすんのよ!!と心の中で叫んだ。しかし、言ってしまったものは仕方がない。周りの生徒が野次を飛ばす中、ルイズは目をつむり、意識を集中しはじめた。
「宇宙のどこかにいる、美しく、強力な、私の使い魔よ!!」
 生徒達は一斉に笑いだした。使い魔を召喚する呪文―サモン・サーヴァントは、コモン・マジック―口語呪文であったが、このようなおかしなスペルは聞いたことがない。それでもルイズは構わず続けた。
「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン!我の運命に従いし、使い魔を召喚せよ!!」
 その瞬間、あたりは、ボンッ!!と爆発に包まれた。生徒達は、土埃にむせびながら、「やっぱりゼロのルイズじゃないか!!」と、言おうとしたのだが…、瞬間、皆は「あっ!!」と息を飲んだ。
 広場の真ん中には、なにやら巨大な"何か"がいる。土埃で何なのかはよくわからないが、ドラゴンのように巨大な"何か"が確かにいる。辺りは驚きで静まりかえっていたが、次第に、土埃が晴れ、ルイズが召喚した、"何か"の姿が見えてきた。 
「あっ、ああ…」
 真っ先に嫌悪と恐怖が入り混じったような声を上げたのは、女生徒達だった。
 ルイズが召喚した使い魔は、金色の戦車に乗った、一言で言うとグロテスクな化け物だった。暗い緑色をし、目のない蛇のような、先端部が膨らんだ長い頭を持ち、腹部からは多くの足が出ている。
 その姿は、あまりにも、女性からすれば、直視できるものではなかったのである。
 召喚した当の本人は、腰を抜かしたりはしないものの、やはり驚異と嫌悪と失望が入り混じったような表情をし、「あ、あががががが…」と言葉にならないような声を上げた後、コルベールに向かってようやく言った。
「せっ、先生、や、ややや、やり直しを要求します!!使い魔は、ね、猫とかトカゲとかドラゴンとか、少なくとも、このハルケギニアにいる動物のはずです。な、何なんですか、この気持ちの悪い生き物は!!こんなのが使い魔だなんて、私、ぜ、絶対にイヤです!!」
「やり直しは認められません。使い魔召喚の儀式は神聖なもの。一度召喚した使い魔は、一生のパートナーです。それをやり直すなど、儀式の冒涜ですぞ。さ、コントラクト・サーヴァントを」
 コルベールは、この化け物を見てもなお、随分と冷静に、そう言ってみせた。
「そ、そんなあ…」
 ルイズは、へなへなと地面に膝をつき、なんとも情けない表情になった。
 その時、緑色の怪物が、声を発した。
「そんなに落胆されるとは心外であるぞ。我こそは全宇宙でもっとも美しくご立派な悪魔、魔王マーラなり。そのご立派な存在が、汝の呼びかけに応え、やってきたのだ、喜ぶべきことぞ」
 魔王と聞き、周囲の生徒達は恐怖に凍りついた。神や魔王など、形而上の存在だ。実在などしないはずである。しかし、あの化け物の見た目のおぞましさと、周囲に放っている魔力の禍々しさは、魔王と言われても納得せざるを得ないほどのものだった。
 しかしルイズは、そんなことよりも、この化け物とコントラクト・サーヴァントをし、一生の使い魔とすることが、心底イヤだった。それで、辺りの空気も全く読まず、こう言い放った。
「どこが、"美しい"よ…。とにかく絶対イヤよ!!これは何かの間違いなの!そう間違い!だからさっさと元いた場所に帰ってちょうだい!!」
「召喚しておいて"去れ"とは…、まあ良い、我はご立派な悪魔ゆえ、その心もご立派なのだ。去れと言われれば去ろう。もっとも、それなりの対価は要求させてもらうぞ。我は悪魔だ。交渉において対価を要求するのは当然のことぞ」
 マーラは、ブルブルと首を揺らし、そう言ってきた。見た目も気持ち悪いが、動きはもっと気持ち悪い。
「対価って何よ?」
 ルイズは、内心で「おえっぷ」と思いながら、気丈にそう言った。
「ダイヤモンド、ルビー、パール、宝玉、100000マッカ、更に汝の生命力を吸わせてもらう」
 マーラはすらすらと要求を並べ立てた。
「ちょっと!!"ほうぎょく"?それに、"マッカ"って何よ!!だいたい私の生命力を吸うですって!?冗談じゃないわ!!」
 ルイズは宝石については触れなかった。最悪、実家に懇願すれば、何とかなると思ったのである。もっとも、そんなことをしたら、今回の件が両親にばれ、実家に引き戻されるかもしれないが…。いや、それでも、こんな化け物を使い魔にするよりはマシである。
「宝玉は生命力を回復する宝珠、そしてマッカは魔界の通貨だ。払えぬのなら、金でも良いが…さて、我はこの世界の単位など知らぬのでな。とりあえず、山ほどの金を用意して貰わねばならぬ」
「そっ、そんなの無理よ!!」
 ルイズは顔を歪めて叫んだ。
「これらを払えぬなら、去るわけにはいかぬ。使い魔とせぬなら、交渉は決裂だ。我は、ギンギンでムラムラなのだ。欲望の限り蹂躙し、世界を煩悩で満たしてやろうぞ」
「ルイズ、さっさと契約しちまえよ!!」
 生徒達は、口々にそんなことを言った。世界の平和のためである。仕方がない。皆の意思は固く一致していた。
 ルイズの頭の中は激しく混乱した。あれだけの要求を払うことなんてできないし払えたとしても私の貴族としてのプライドはどうなるのかしら契約したらあんなのと一生一緒なのよでも契約しなかったらこの場で死んじゃうかもしれないしえええええいもうどうにでもなれ!!
「わっ、わわわわ、わかったわ。コ、コントラクト・サーヴァントを行うわ」
 ルイズは、きわめて投げやりな思考のなかで、そうマーラに告げた。周りの生徒達は一瞬ほっとし、直後、この後行われることとなる、コントラクト・サーヴァントのことを想像し、嫌悪感で一杯になった。
 ルイズは、マーラに恐る恐る近づき、こう告げた。
「あ、頭を下げて、そ、それで、く、くくくく、口を閉じてちょうだい」
「良かろう」
 ぶじゅるるるっとグロテスクで粘液質な音をたて、マーラは頭をたれた。
 ルイズは見た目の気持ち悪さと鼻をつく臭いとで泣きそうになったが、意を決してスペルを唱えはじめた。
「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!!」
 そう言って、ルイズはマーラの"口"にあたる部分に接吻した。辺りの生徒達の反応は様々だった。見るに耐えかねて目を瞑る者、怖いもの見たさで見てしまった者…。とにかく、その場の空気は、"気持ち悪い"で一杯であった。
 コントラクト・サーヴァントが終わると、ルイズは、目に涙を一杯に浮かべ、とにかく情けないような、絶望したようなふにゃふにゃした顔になり、地面にへたりこんでしまった。
さっきは混乱して投げやりになったけれど、冷静に考えると、ああ、やっぱりやるんじゃなかった…おえ、おええっぷ…。もうこんなんじゃ結婚できないわよ!!というか、私、あんなのを一生使い魔にするんだわ…。不幸ってレベルの話じゃないわ!!ああもうイヤ!!
 そんなふうにルイズが後悔と絶望に飲み込まれていると、いきなり付近にさっと光が差し、直後、落雷のような強い光が発生した。
 
 落雷のあった場所には、全身黒ずくめで、マントを羽織った青年と、その脇に、これまた真っ黒な猫が立っていた。マントの端からは剣の鞘のようなものが、にょっきりはみ出ている。青年は奇妙な帽子を被っていたが、短い黒髪で、そして…、非常に鋭利な"もみ上げ"の持ち主であった。前方に向かってナイフのように突き出たもみ上げなど、見たことも聞いたこともない。そのように、もみ上げはどう考えても不自然だったが、肌は透き通るように色白で、はっとするほど整った顔立ちの、異国風の美丈夫であった。
 青年は、周囲があっけに取られている間に、マーラに何の躊躇もなしに近寄り、淡々と告げた。
「まったく、単独捜査中に迷子になるとは…。強大な力を持つ魔王にあるまじきことぞ。しかも、いつまで経っても戻ってこないとは。それでアカラナ回廊への道を開いてまで貴様の後を追ってみれば、このような異世界で油を売っていようとはな…」
 突然現れた青年に対し、マーラは頭が上がらないといった様子で、うな垂れている。その様子にしばし辺りの者はあっけに取られていたが、そのうち、コルベールが歩み寄って、青年に話しかけた。
「あの…、貴殿は一体…、何者で、そして、あのマーラとどのような関係なのでしょうか?」
 青年はコルベールに向き直り、事情を説明しだした。
「我は葛葉ライドウと申すもので、探偵をしているものだ。いや、我が”仲魔”を見てしまった以上、正直に言うしかあるまい。…我は、悪魔召喚皇葛葉ライドウと申す。本来は、デビルサマナーとして、神話上の存在…、悪魔を使役するものだ。そして、この悪魔は、我の"仲魔"だ。しかし、単独で捜査を行わせていたところ、こやつは迷子になってしまった。それで、我が探しに来たというわけだ」
 ライドウは、ご丁寧にヤタガラスから賜ったサマナーの称号までつけて身分を明かした。なんともまあ、生真面目というか、ナルシストというか、とにかく、客観的に見て、少々笑える台詞であった。ライドウは、ややヌケていた。
「デビルサマナー、悪魔、仲魔…」
 コルベールは復唱した。
 コルベールは気づいていないが、彼の使う言語はライドウの言語とは異なっている。コルベールが気づかないのは、ライドウがまさか異世界から来たなどと思っていないためである。そして、ライドウは、明らかに日本ではない場所で、日本語が通じることを奇妙に思ったものの、通じるのであればとりあえずそれで良いと考えていた。そのようなわけで、言葉が上手に翻訳されているため、コルベールが、"仲魔"を"仲間"と誤解することはなかったのである。
 "仲間"というのは、人間の知り合い、友のことである一方、"仲魔"とは、悪魔召喚士―デビルサマナーが、使役し、そして共に戦う存在である。位置づけは色々と違うが、使い魔と似た存在とも言えなくはない。もっとも、サマナーは、魔法を使うのではなく、悪魔を使役して戦うし、また、仲魔は一生のものではなく、悪魔合体によって一期一会を繰り返すものなのだが。
 そんなわけで、コルベールは、その"仲魔"という言葉を、およそ使い魔に似たニュアンスの言葉として理解できた。しかし、"悪魔"は、"悪魔"である。神に反する邪悪な存在…、人を貶める存在…、もっとも、実在するなどとは思っていなかったが…、それを使役するとは、邪教の者だろうか?コルベールはそのように考え、ライドウに言った。
「悪魔を従えて使役するだって!?貴様は、邪教の者だな!!神に唾はく邪教徒め!!私の生徒達には、指一本触れさせんぞ!!」
 コルベールは、鉄の棍棒のような杖を取り出し、身構えた。それを見て、生徒達は、一斉にコルベールの後ろに向かって走り出した。
「まったく、"悪魔"は、文字通りの"邪悪な魔なるもの"だけでなく、あらゆる神話上、伝説上の存在を含むのだが…、そもそも葛葉のデビルサマナーを、邪教徒呼ばわりとはな…。我らは国家の秩序と人々の安穏な生活を守る存在ぞ…。まあそんなことを言っても仕方あるまい。うぬもまだまだよの。悪魔などと、安易に口にするべきではなかったな。もっとも、探していた仲魔がマーラでは、どのみちこうなっていたのかもしれんがな。さて、面倒だが、きちんと事情を説明するしかないな」
 随分と長々と、やたらと解説口調に、そう言ったのは、ライドウではない。彼の脇にいる黒猫―ゴウトであった。ゴウトは黒猫の姿こそしているが、葛葉の一族のもので、悪魔について豊富な知識を持った、ライドウのお目付け役である。そして、ゴウトの声は、悪魔召喚士にしか聞こえないのだが…、魔法使いが普通に存在し、言葉を話す動物が普通に存在する世界では、どうやら勝手が違ったらしい。
 つまり、ゴウトの言葉は、その場にいる全員に聞こえていたのである。
 ライドウとゴウトは驚いた。ここにいる全員が、デビルサマナーではないにしろ、何かしら霊力や魔力を持った人々に違いない。事を荒立てる気はないが、それでもライドウ達は念のため用心し、神経を張り詰めながら、再び事情を説明しようとした。
「我は邪なる者ではない。悪魔とは、天然自然の力の顕れである、あらゆる伝説上の存在を指してそう呼ぶのだ。我らはそれら悪魔の力を用い、人々に災いをもたらす悪魔を討つものだ。それにしても、貴殿らは、ゴウトの、この黒猫の言葉が理解できるようだが…、貴殿らは、何かしらの呪術者の集団か?」
 ライドウの態度を見て、コルベールは、杖を収めた。彼からは、邪な魔力は感じられない。むしろ、静かで穏やかな魔力をまとっていた。彼の態度と、言動と、まとった魔力から、コルベールは、ライドウのことを信用することにした。
「いや、失礼した、ライドウ殿。私は、トリステイン魔法学院の教師、ジャン・コルベール、炎蛇のコルベールだ。ここは、魔法学院、ゆえに貴族の子息が、立派なメイジになるために集まっているのだ。ところで、貴殿は一体どちらから参られたのだ?先ほどは突然現れたし、それに、ハルケギニアでメイジを見て分からぬものなどいないはずだ。それに、貴殿のその魔力、そして従えた使い魔の黒猫…、二つ名をお持ちのようだし…、貴殿はメイジ、つまり魔法使いではないのかね?」
 なるほど、魔法使いの集団か、葛葉の者にも、似たようなものがいるが…これほどの大人数とはな、などと思いつつ、ライドウは返答について少し考えた。時空の回廊を通ってやってきたなどと正直に言ったところで理解されるだろうか?それに、異世界への干渉は最低限にしたほうがよいだろう。
「まず我らデビルサマナーは、魔法使いとは異なるものだ。貴殿らが言うところの二つ名は、サマナーの格を示す称号だ。まあ、二つ名ととらえてもらっても構わぬ」
 そう言いつつ、ライドウは黒猫のほうを見ながら続けた。
「この黒猫は、ゴウトという。見た目は黒猫だが、中身は我よりも遥かに長き時を生きる、我と同じ葛葉の者だ。役割は、我のお目付け役といったところだな。貴殿らの言う、使い魔とは違うものだ」
 再びコルベールのほうに顔を向け、更にライドウは続けた。
「そして、我らは秘術を用いて仲魔のもとへ直接移動してきたのだ。 ゆえに、ここがどこなのか、そして、我が元いた場所とここがどれほど離れているか、わからぬ」
 ライドウは、馬鹿正直に全てを話したわけではなかったが、かといって、嘘を言ったわけでもなかった。
「元いた場所は、なんという国なのですか?」
 ライドウのぼかした発言に、コルベールは純粋な好奇心から、食いついた。
 ライドウは再び思案した。日本と言うのはいかにもまずい。仕方なしに、ライドウはこう言った。
「国名はわけあって明かせぬが、我は、”帝都”と呼ばれる場所から参った。恐らくは、この地からは途方も無く遠い地だ」
 そう言われ、コルベールは引き下がり、それから、言いにくそうに告げた。
「貴殿は、仲魔を連れ戻しに来たと言いましたな。しかし申し上げにくいのだが、貴殿の仲魔は、そちらにいる、ミス・ヴァリエールの使い魔として契約してしまったのです。メイジと使い魔の契約は神聖で絶対のもので、使い魔は、命ある限り、メイジに仕えなければなりませぬ」
 ライドウがコルベールに言われ、視線を向けると、そこには、泣きそうになりながらも、顔を真っ赤にし、わなわなと肩を震わす桃髪の少女と、そばに控える彼女の使い魔―マーラがいた。
 ライドウはそれを見た後、コルベールに淡々と言った。
「ならば、一度マーラには死んでもらうこととする。何、あとで生き返らせることはできるので心配はいらぬ。問題は、マーラが素直に従うか、だが…」
 ライドウがマーラを見ると、マーラはぬけぬけとこう言い放った。
「我はこの少女と契約し、使い魔となったのだ。先ほどはついつい以前までの癖で縮こまり、萎えてしまったが…汝はもはや主人ではないのだ。それに、この少女は不感症の汝よりも仕え甲斐があるわ。汝には悪いが、大人しく殺されるわけにはいかぬな」
「サマナーに仕える身でも、その本質は煩悩の魔王であることに変わりはないか…、まったく、面倒なことだ」
 ゴウトは忌々しそうに言った。
 その時、ようやくルイズは口を開いた。
「ちょっと、あんた、元の主人のところに帰りなさいよ!!主人の命令よ!!使い魔なんだから言うとおりにしなさいよね!!」
「我は汝の使い魔とはなったが、未だ忠誠を誓ったわけではない。ゆえに、主人の命令といえども必ずしも聞けぬ。我は煩悩を司る神、不感症の男よりも、うら若い少女のほうが、仕え甲斐があるというものよ。我に忠誠を誓わせたくば、もっと互いのことを良く知らねばならぬな」
 そう言ってマーラは、ぶるっ、ぶるぶるっと震えた。どうやら喜んでいるらしい。
 ルイズは寒気がした。この、汚らわしい、汚らわしい、口に出すのもはばかられるような姿をした怪物は、中身も同じくらい汚らわしいのだ。忠誠を誓わせるまでに、この化け物は、汚らわしいことを要求するに違いない。兎も角、こんなものとは、さっさとおさらばしたい。そこまで考え、ルイズはこの化け物の本来の飼い主―ライドウとか名乗った異国風の青年に心底頭にきた。
 ルイズはぷるぷるわなわなガクガク震えながら、ライドウの前につかつかと歩みより、怒りに顔を歪ませて、煮えくり返った腹のうちをぶちまけた。
「ちょ、ちょっとあんた、ぺ、ぺぺぺ、ペットにはしっかり首輪をはめときなさいよ。こ、こっちがどれだけ迷惑したと思ってんの!?わたしはあんたのせいで、あ、ああああああ、あんなのと、あんなのと…」
「キスしちゃったのよ!!ぐすん」
 太っちょの男子生徒がルイズのあとに付け加えた。直後ルイズは神速の動きでその生徒の前にくるくると側転し、その勢いで具合のいいドロップキックを叩き込み、再び神速の速さでライドウの前に戻ってきた。
「うおっ、あの小娘、見かけによらずかなりの使い手だなあ。体術では、おまえ以上かもしれんぞ。ふふっ」
 ゴウトは、この猫にしては、―中身は猫ではないのだが…、珍しく感動したようであった。何事もなかったようにルイズは続ける。
「とにかく、あんたのせいで私はとんでもない迷惑を被ったの!!ちゃんとあれを連れて帰るのは当然としても、それだけじゃ私の気が済まないわ!!」
 ルイズは、人差し指を立て、ライドウを指差した。背は低いにもかかわらず、なんとも凄まじい迫力であった。魔人アリス…、いや、闘神アスラなみの気迫かもしれぬと、ライドウは感じた。
 しかしライドウは、一見華奢な桃髪の少女の、驚異の身体能力には特に驚きもせず、そしてその鬼のような迫力にも動じず、深々と頭を下げた。
「汝らに多大な迷惑をかけたことは、いや、まことに済まなかった。侘びの言葉もない。仲魔の不始末は、サマナーが責を負わねばならぬ。さて、まずはマーラのことを片付ける。他の事は、その後にいくらでも聞こう」
 ライドウはそう言うと、マーラに再び向き直った。
「魔王マーラよ。汝が我の命を聞けぬというのならば、汝と一戦交えるしかあるまい。この場では汝の、現在の主人にも危害が及ぼう。場所を変えようぞ」
 マーラは、ぶるっぶるるっ!!と身震いすると口から粘液を撒き散らして笑い出した。
「ゲアゲアゲアゲア!!我はこの世界でもっともご立派な魔界の王ぞ。正々堂々などという言葉、我に通じると思うな」
「ふん!!やはりやる気か、くるぞ!!」
 ゴウトがそう言うのとほぼ同時に、ライドウは外套を跳ね上げた。外套の内には、腰に拳銃と退魔刀、そして胸には仲魔を封じ込めた管が取り付けられている。ライドウの魔力が、身体にみなぎる生体マグネタイトが、緑色のオーラとなって、ライドウを包み込む。戦闘態勢に入ったライドウは、腰に差した退魔刀を引き抜き、同時に胸のホルダーから銀色の管を取り出した。
「今度こそ、ギンギンにご立派な我が、汝を突きまくってガタガタにしてくれよう!!!」
 そう言いながら、マーラはライドウとルイズに向けて突進してきた。
「いいいいいやあああああああ~~~~!!!!」
 ルイズはどこからそんな声を出しているのか分からないような、美少女台無しの間抜けな悲鳴を上げたが、ライドウはルイズを抱えあげると、風のようにマーラの突進をかわした。
「すぐに片をつけるが、危険なので離れているがよい」
 ライドウがそう告げると、ルイズは「あがあがががが…」と相槌にならないような声をあげ、その場を離れた。
「そう避けるでない。避けてしまっては、我が煩悩を堪能できんというものだ」
 そう言うと、マーラは再び突進しつつ、口から白い唾を吐き出した。
「我の唾は汝には刺激が強すぎるかもしれんの」
「たたり生唾だ!!あれは刀では防げん。避けるしかない」
 ゴウトが瞬時にアドバイスを下す。
 ライドウはマーラの突進を一瞬刀で受け止め、直後白濁色の生唾をバックステップでかわした。刀からは緑色の生体マグネタイトが、槍のような形の光なって現出し、盾の役割を果たす。ライドウの刀は、魔昌―悪魔の力が封じ込められた物質、を使って作られた、特殊な刀である。その強度、そして悪魔に対する攻撃能力は、通常の刀とは次元が違う。そしてこの刀は、ライドウのもつ生体マグネタイトを吸収し、攻撃力、防御力を飛躍的に高めるのである。
 ライドウはマーラの生唾をバックステップでかわし、指の間に二本の管を構えた。管の蓋が上がり、中から緑色に輝く芯が出てくる。ライドウはその状態の管を前方に突き出した。すると、管から光がうねるように飛び出した。うねる光は稲妻をまとった光の柱となり、そして、羽を生やした金髪の女性と、鎧をまとった褐色の剣士の姿へと変化した。―ライドウが召喚したのは、妖精の女王、ティターニアと、竜退治の英雄、ジークフリートであった。この二体の悪魔は、マーラの魅了攻撃(魔力のこもった”チャーム”のことである)に対して耐性がある。加えて、ティターニアは強力な属性魔法と回復魔法のエキスパート、ジークフリートは補助魔法と物理攻撃のエキスパートであった。
「あら?お相手は誰かと思えば、ご立派様じゃないの。坊やも出来の悪い仲魔を持って大変ね」
「我らが主に仇名すとは!!我が剣にて討ち果たさん!!」
 ティターニアとジークフリートは口々にそんなことを言い、そして戦闘を開始した。
 戦闘はあっという間だった。ジークフリートは物理攻撃を反射するテトラカーンを味方に唱え、そして、タル・カジャで物理攻撃力を上昇させると、雄たけびを上げながら剣を構え、マーラに飛び掛った。体格ではジークフリートはマーラよりも遥かに小柄だが、その突撃のスピード、そして威力は、マーラを遥かに上回るものだった。一方のティターニアは、強力な火炎魔法でマーラを火達磨にし、マーラの動きを封じた。二体の悪魔は、ライドウの手によって徹底的に強化された、選りすぐりの精鋭である。仲魔と連携しながら、ライドウは神速の突きを叩き込んだ。槍のように伸びたマグネタイトの刃による、目にも留まらぬ速さの突きで、マーラは瞬時に止めをさされた。
 ギンギンだったマーラは十数秒のうちに、大量のマグネタイトを頭部から放出し、へにゃへにゃに萎えて縮まってしまった。
 ライドウはへにゃへにゃになったマーラにくるりと背を向け、刀を鞘に九割ほど納め、どこを見ているのやら、遠くを見つめ、凛々しい顔立ちで立っている。
「や、やはり、貴様は、不感症、だな…」
 マーラが最後にポツリとそう言うと、ライドウは刀をカチンと鳴らし、鞘に納めた。その瞬間、マーラからマグネタイトが爆発したかのように溢れ出し、そして、ライドウの胸の管に吸い込まれていった。

「もう夕暮れ時か。戦闘よりも、事後処理のほうに時間がかかってしまったな」
 ゴウトは日が傾きかけた空を見上げ、そう呟いた。
 騒動そのものは一瞬で片がついてしまったが、結局、事態の収拾のため、ライドウはこの時間まで学院にいなければならなかったのである。事態の収拾といっても、それほど多くのことをやらなければならなかったわけではない。戦闘の際はマーラの動きを止めた上で、物理攻撃で倒したので、周りにもほとんど被害を出さなかった。生徒達はとりあえず自室で待機し、今回の件に関しては、要らぬ混乱を招くとよろしくないので、外部に口外しないように、とコルベールは告げた。そこでライドウはルイズ、コルベールと共に学院長室へ向かい、学院長のオスマンに今回の件について話していたのである。
 自分は魔を用い、魔を討つデビルサマナーであること、ルイズの元に現れたのは自分の仲魔であること、迷子になった仲魔を探すため、秘術を用いて後を追ってやってきたこと、仲魔を倒して管に戻したこと、管に戻した仲魔を、再び魔法で蘇生させたこと、ライドウは、順を追って、ゆっくりと話した。
「ふむ、デビルサマナーとな。メイジとはまた異なる存在…、世界とは我々の知らぬことだらけじゃな」
 オスマンは、皺枯れた声で、短く言った。
「学院長、ミス・ヴァリエールは、ライドウ殿の仲魔と、コントラクト・サーヴァントを行っています。使い魔の契約はその使い魔が死ぬまで決して切れることはありません。ライドウ殿、あなたの仲魔には、契約時に、使い魔のルーンが刻まれているはずです。契約が解除されていれば、そのルーンは消えているはずですが…確認することはできますか?」
 コルベールに言われ、ライドウは、管を一本引き抜き、それをかざした。この場で召喚しようというのだ。
 コルベールは止めようとしたが、間に合わなかった。
 管からは光が飛び出し、例によって光の柱となり、次第に姿を形作っていったのだが…、マグネタイトを放出し、萎えに萎えてしまったマーラは、以前に比べれば、遥かに小さくなっていた。それこそ犬猫の大きさである。
「おお、なんともまあ、わしも最近ではこんな…」
 そこまで言って、オスマンは、辺りの白い目に気づき、こほんっ、と咳をして口をつぐんだ。 
「ルーンは…、見当たらない、というより、こんなに縮んでしまっては見つけようもありませんな」
 コルベールはため息まじりにそんな感想を口にした。
 そこでライドウは学院長室を出ると、ルイズとコルベールを外に連れて行き、ティターニアに回復魔法をかけさせ、マーラを全快状態にした。マーラはみるみる大きく、逞しく、そしてギンギンになった。マーラは流石に懲りたのか、全快になってもライドウに逆らう気はないようだ。
 コルベールは大きくなったマーラの身体を、頭から、お腹、足の一本一本まで隈なく、本当に隈なく調べたが、ルーンは見つけられなかった。どうやら、契約は解除されたらしい。
 その後、マーラの粘液でベタベタになりながらも、コルベールは、真剣に、困った様子で、ルイズとライドウに告げた。
「とりあえず、使い魔の契約は解除されたようだが…、使い魔は運命によって選ばれるとも言われている。ミス・ヴァリエールが、ライドウ殿の仲魔を使い魔とする運命なら、再び使い魔を召喚しても、同じ結果になるかもしれないし、また違う使い魔が現れるのかもしれない。同じ結果になる場合、ライドウ殿には申し訳ないが…」
 そこまでコルベールが言ったのを聞いて、ルイズはそれをさえぎって叫んだ。
「い、いえ、ミスタ・コルベール、もしあんなのがもう一度現れるなら、私もう、使い魔の召喚なんてできません。使い魔は一生のパートナーです。パートナーが、あんな、その…、煩悩に満ち溢れているなんて、私には耐えられません」
 本音はそれだけではなく、見た目と中身が汚らわしくて、いかがわしいことも理由だったが、それは恥ずかしくてとても言えないルイズであった。
「しかしだね、ミス・ヴァリエール。使い魔のいないメイジなど、メイジとは呼べませんぞ。召喚の儀式は、再び行わなければなりませんぞ」
 コルベールとルイズのそんなやり取りを見て、ライドウは口を開いた。
「我の仲魔は、本当に、ヴァリエール殿に召喚され、使い魔となったのか?もしかすると、偶然に現れ、そして、汝らのいう、契約自体、成功していなかったのかもしれぬ」
 ルイズとコルベールは冷静になってその時のことを思い出してみた。確かに、コントラクト・サーヴァントをした直後、ライドウが現れ、そのまま騒動になったため、契約の成功は確認していなかったのである。
 そこでライドウは、マーラに直接聞いてみることにした。嘘など絶対つけないような、有無を言わさぬ迫力であった。   マーラは、ふにゃふにゃに縮まると、その口にしては随分と小さく、そして卑屈な態度でこう言った。
「その、我が時空の回廊を彷徨っていると、なにやら随分遠くまで来てしまったようでな、帰る方法も分からんで途方に暮れておったら、丁度召喚の儀式をやっているのが見えてな…、ご立派な使い魔が欲しいと言っていたので、面白そうだから行ってみたのだ…」
「ご立派なんて言ってないわよ!!」
 ルイズは怒鳴ったが、コルベールは冷静に分析していた。
「と、いうことは…、あなたは、召喚のゲートをくぐってやってきたわけではないのですか?」
「いや、召喚の儀式の一部始終をしばらく見た後、回廊から飛び出し、実体化したのだ。ゲートとやらをくぐってきたわけではない」
「では、ミス・ヴァリエールはあなたを召喚したわけではない、ということになりますな」
 それを聞き、ルイズの顔が、ぱーっ、と輝く。
 あれは自分が召喚したわけじゃない。あのときの召喚は結局失敗だったのだ。いや、失敗したのは癪だけど、それでも、あんなのが運命の使い魔なのより100倍ましよ。
 ルイズはそこまで考えると、真面目な顔でコルベールの方を向いた。
「先生、明日は、私、必ず成功させてみせます」
「ああ、君ならきっと立派な使い魔を召喚できるよ」
「先生、”立派”は付けなくていいです…」
 ルイズがそう言うと、コルベールは「すまんすまん」と頭を掻きながら苦笑いした。
「これで一件落着か。ああ、ライドウ、まだ迷子の仲魔がいたんだったな」
 そのやり取りを見ていたゴウトが、ポツリと言った。


 夕暮れ時の広場に、ライドウとゴウトは立っていた。日はほとんど沈んでしまい、東の空から夜が訪れようとしている。東の夜空を見上げ、ゴウトは呟いた。
「月が二つある世界、か。まったく、以前ラス・プーチンに飛ばされた世界は、我らの世界と瓜二つの世界だったが、ここはどうやら全くもって別の世界のようだな。さて、我らもそろそろ元の世界に帰らねばなるまい」
 そう、一通りのことは済んだし、異世界にあまり長居するのも良くないので、そろそろアカラナ回廊に戻り、元の次元、世界に帰らなくてはならない。コルベールやオスマンは日も暮れるので帰るのは明日にしたらどうかと言ってきたが、アカラナ回廊を通れば、それほど時間もかからず元いた世界に帰れるのであった。ただその前に、ライドウは、ミス・ヴァリエールと呼ばれていた、桃髪の少女に、ルイズに、きちんと侘びをいれようと考えていた。さて、それでライドウはルイズを探していたのだが…、なかなか見つからず、広場のほうに来ていたのである。
「私のことを探していたんでしょ?」
 後ろから声がし、ライドウが振り向くと、ルイズが立っていた。ライドウはルイズに歩み寄ると、深々と頭を下げた。
「此度はまことに済まなかった。償いなど出来るものではないが…、せめて、汝の要求は何でも聞こう」
 ライドウがそう言うと、ルイズは横を向いて、怒ったような、照れたような口ぶりで喋りだした。
「い、いいわよ、そのことはもう。貴族が誰かから物貰ったりしたら、プライドが台無しなのよ。だから、別に償いなんていらないわ」
 そう言った後、ルイズはぽつりと付け加えた。
「そ、それに、あんたのそのおかしな”もみ上げ”で楽しませてもらったから、それで十分よ」
 ライドウは、一言、「済まない」と言い、頭を上げた。
「明日の儀式、我は上手くいくと信じているぞ。それに…汝の体術は見事であった、我以上かもしれぬ」
 ライドウは珍しく口元にわずかに笑みを浮かべた。
「驚いたわ、あんたって笑うことあるのね」
 ルイズもそう言うと、笑みを浮かべた。
「あんたはメイジじゃないけど…、その、仲魔だっけ?使い魔のようなものよね、まあ、使い魔と違って、沢山いるみたいだけど…、その仲魔を上手く使役したり、それに、いなくなった仲魔をこんなところまで探しに来たり…、なんていうか、強い絆があるんだなって、勉強になったわ。私も、あんたに負けないくらい立派なメイジになって、使い魔との絆を深めてみせるわ」
 ルイズの目には、強い意志が宿っていた。ライドウは、これで心残りなこともなくなったと感じた。
「では、我も一層精進せねばならぬな。では、我はそろそろ元いた場所に帰らねばならぬ。さらばだ」
 ライドウが歩き出すと、ゴウトもそれを追って、歩き出した。
「さよなら、あと、猫ちゃんも元気でね」
 ルイズが、可愛らしい調子でそう言うと、ゴウトは、びくっ!!と動いた後、再びライドウの後を追って駆け出した。

「う~む、やかましい小娘だと思っていたが、可愛らしいところもあるではないか。ね、猫ちゃんかぁ…」
 ゴウトは半分のぼせた頭でそんな言葉を発した。ライドウはそんなゴウトのことをにやにやと見ていた。
「な、何だその目は!!勘違いするな、孫娘を見て翁が可愛らしいと思うようなものだ。別に、あの娘に撫でられたいとか、抱っこされたいとか、そんなことを考えていたわけではないぞ!!」
 そんなことを言うゴウトを見て、ライドウはますますにやにやした。

 次の日、トリステイン魔法学院では、再び使い魔召喚の儀式が行われていた。昨日の騒動のせいで、多くの生徒が儀式をできぬままになっていたのだ。そんな中、ルイズの順番が回ってきた。
 私はやれる。きっと上手くいく。今度こそ、美しく強力な使い魔を召喚してみせるわ。
 心の中でそう呟いた後、ルイズはサモン・サーヴァントのスペルを詠唱しはじめた。
「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、五つの力を司るペンタゴン、我の運命に従いし、使い魔を召喚せよ!!」
 瞬間、稲妻をまとった光の柱が現れる。
「爆発しなかった…。やった!!成功!?成功なの!?」
 ルイズは嬉しさと興奮で、ぱーっ、と明るい顔になったが、光の柱が次第に姿を形作っていくにつれて、急速に嫌悪と失望が混じった情けない顔になっていった。
「わしは邪神ミシャクジサマ、遠く州羽の海よりやってきたものじゃ。ところで、明子さん、ここはどこなんじゃ?」
 ミシャクジサマと名乗ったそれは、目の無い、頭が膨らんだ白い蛇に手足を生やしたような、人の姿をしていた。なんというか、女性にとっては、昨日のマーラと同じくらい、直視できない姿をしていた。
「なんでこんなのばっかり現れるのよ~~~~~、というか、アキコって誰よ~~~~!!」
 ルイズがそう叫ぶと、再び稲妻が起こった。
 現れたのは、昨晩帰ったはずの、ライドウであった。
「まさか、またあんたの仲魔なわけ?」
 ルイズはうんざりしたようにライドウに話しかけた。
「重ね重ねまことに済まない。実は、迷子になった仲魔はマーラだけではなかったのだ。昨晩はあの後、再び仲魔の後を追っていたのだが…、またここだとはな…」
 ライドウは、流石にばつが悪そうにそう言った。
「ほら、ミシャクジサマ、明子さんはここじゃなくて、この中でしょ」
 ライドウは珍しく、くだけた言葉遣いで、ミシャクジサマに話しかけた。それに周囲の者は驚いたが、ミシャクジサマはライドウを見て嬉しそうに身体を震わせた。
「おうおう、その中じゃったか、最近忘れっぽくていかんのう。それにしても、歩き疲れて腰が痛いわい、管の中で休ませてもらうとするかの」
 そう言うと、ミシャクジサマは再び光となって、ライドウの胸の管に吸い込まれていった。
「二度までも、大変済まなかった。これで迷子の仲魔は全てゆえ、安心なさってくれ」
 ライドウは深々と頭を下げた。
「長居は無用。さらばだ」
 それだけ言って、あっという間にライドウは再び光の柱に消え去った。
あまりに一瞬の出来事に、ルイズも、コルベールも、周りの生徒達も、あんぐりと口を開けてたまま、立ち尽くしていた。

「で、その後に、俺が召喚されたってわけ?」
 サイトは呆れたように言った。サイトは、これまでルイズの部屋で、延々この話を聞かされていたのである。
「そうよ。平民が現れたのには、そりゃ驚いたし、心底イヤだったし…それにあんたの場合はほんとに使い魔になっちゃったし…、まあ、それでもあんなのよりはずっとマシよね」
「俺をそんな化け物と比べるなっつの。ところで、なんでそんなこと俺に話すんだ?黙ってりゃいいのに」
「あんたってほんと馬鹿ね。この話はみんな知ってるのよ?隠しておいてもいずればれるの。それに、誰かが変な脚色して話すくらいなら、私が話したほうましよ。さ、もう寝るわよ」
 そう言うとルイズは、ランプを消し、ベッドに横になった。サイトも、ルイズの隣に潜りこみ、そして、天井を見上げながら呟く。
「なあ、ルイズ。さっき言ってた、ライドウさんと話したっていう、使い魔との絆って話だけどさ…、おまえがどう思ってるかは分からないけど、俺は、おまえのことを絶対守る。俺にとって、おまえは、大切な人だからな。それに、俺は、本当に運命に従って、おまえの使い魔になるために呼ばれたんだろ?それが運命なら、俺はおまえに会えた運命に感謝してる。上手く言えないけど、それだけ言いたくてさ」
 ルイズは毛布に頭をすっぽり入れて、しばらく黙っていた。サイトの言葉が嬉しくてどうしようもなくて、何を言っていいのか分からなかったのである。ようやく毛布から顔を出すと、ルイズはサイトの肩の辺りに頭を乗せ、目を閉じながら呟いた。
「まあ、私は、あんたみたいな、女の子と見れば誰でも尻尾をふる使い魔には、本当にうんざりさせられるけど…」
そこまで聞いて、サイトは一瞬、まずい、と思った。日ごろの行いが悪いのに、かっこつけた台詞を吐いたことに、ルイズが怒ったと思ったのである。しかしルイズの声は怒った風ではない。ルイズは続けた。
「でも、私にとってはたった一人の使い魔なんだからね。あんたの代わりはどこにもいないんだから…死んじゃったり、いなくなったりしちゃ絶対ダメなんだから…」
 そこまで言って、ルイズは眠くなったのか、くーくーと可愛らしい寝息を立て始めた。
 そんなルイズを見て、サイトも眠りに落ちていった。
 窓の外には、美しい双月が浮かび、柔らかい月光が二人の部屋に差し込んでいた。ふと、中天の双月を、龍のシルエットが横切った。月の光のせいか、龍は金色に輝き、そして、その背には、外套をなびかせた人影を乗せていた。





【後書き】
今回のこの大惨事[たらーっ(汗)]は、マーラ様とミシャクジサマの見た目のきわどさ、そしてアカラナ回廊、アバドン王からの新要素、「仲魔の迷子」がネタになっています。

原作でルイズはサイトを呼び出す前に何回か失敗したらしい、その時に現れたのが、ライドウのお仲魔だった、というお話。
とりあえず、書いていて思いましたが、ルイズよりゴウトのほうがツンデレになってしまいました。
ゲーム本編でもゴウトは年寄りのくせに萌え要員だったりするんですよね・・・[たらーっ(汗)]





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